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人工知能(AI)活用でコールセンターが変わる?システムの導入事例と選び方

人工知能(AI)活用でコールセンターが変わる?システムの導入事例と選び方

スマートスピーカーや自動車の自動運転、株式投資のロボットアドバイザーなどさまざまな分野で開発・活用されている人工知能(AI)。実はコールセンターでも活躍していることをご存じでしょうか。AIを活用するコールセンターとはどのようなものなのか、コールセンターの仕事をAIに任せることでどのようなメリットが生まれるのかなどを解説します。

AI時代のコールセンターについて

AI時代のコールセンターについて

近年話題のAIがコールセンターでも利用されています。オペレーターの業務支援、チャットボットや音声での顧客対応、マネジメントの自動化など、さまざまな業務でAIが活用されています。AIの基礎知識、そしてAIでコールセンター業務がどう変わるのかなどを今回の記事で具体的に見ていきましょう。

AI人工知能とは?

AIコールセンターとはどのようなものなのでしょうか。AIとはArtificial Intelligenceの略で、人間のように知的なふるまいができる人工的に創られたシステムを意味します。AIには大きく分けて汎用人工知能特化型人工知能の2種類があり、通称「強いAI」「弱いAI」とも呼ばれています。

汎用人工知能は、プログラミングされた作業以外の初めて直面する事態に対しても、自分で考えて行動できます。特化型人工知能は特定の内容に関する思考・検討に特化した人工知能で、現在のAIを活用したシステムのほとんどがこちらのAIを使用しています。自動運転や画像認識、会話など、一つの機能を専門的に行います。

AIコールセンターで活用されているのも特化型人工知能です。AIを利用したコールセンターでは、これまではすべてオペレーターが行っていた業務を代行し、オペレーターの負荷を軽減します。またAIが行うことで品質を向上し、顧客満足度を上げることも可能になります。

オペレーター業務支援

電話での会話をこれまで通り人間のオペレーターが行い、AIはその業務をサポートします。マニュアルやWebサイトの掲載情報を自動表示することで、業務経験の浅い社員でも品質の高い対応が見込めます。またチャットボットで簡単な質問に答えるなど、顧客対応の一端も担っています。

データ分析

お客さまの声や購入履歴などから顧客の行動を予測します。行動予測で最適なプロモーションを行うことで、売り上げに貢献することも可能です。

現在のコールセンターに求められていること

これまでのコールセンターは、顧客からの問い合わせやクレームに対応する業務が一般的でした。製品やサービスを購入した際のアフターサービスとして機能している面が多くあったのです。

ところが近年のコールセンターでは、顧客接点としての役割が期待されています。最近では、製品やサービスを手に入れるまでの過程や手に入れた後の体験、製品・サービスが持つストーリーに価値を見出す顧客が増えています。したがって、コールセンターにおいても、企業の最前線で顧客に良質な体験を提供することで、売り上げや企業イメージに貢献する役割を担っているといえるのです。

AIとコールセンターの親和性について

コールセンター業務において、AIができることは数多くあります。前述の通り、オペレーターの業務支援やデータ分析などはAIの特性から考えると得意とする分野です。機械学習による分析・予測やテキストマイニングによるデータの解析も、人間よりはるかに効率よく行えます。

チャットボットで対応の自動化

インターネット上でリアルタイムに応対するチャットボットが人間の代わりに顧客からの問い合わせに答えます。24時間365日休みなく稼働してくれるAIを導入することで、人件費やオペレーターの作業負担を軽減できます。音声認識技術によって、顧客の声のトーンから顧客満足度の自動測定を行うことも可能です。

オペレーターの対応品質の平均化

オペレーターと顧客の会話をリアルタイムで認識してテキスト化することで、FAQ検索が容易になります。AIのFAQサポート機能の利用によって、経験の浅いオペレーターでも経験豊富なオペレーターのようにすぐさま対応できるようになるでしょう。オペレーター本人の経験値に左右されない、高品質な対応を可能にします。

これらのAIを導入したコールセンターでは、品質を下げずに新人教育のコストを削減できます。もう一つのメリットは、オペレーターの定着率の向上です。コールセンターは、クレーム対応なども含めてストレスを感じやすい業務です。AIが作業をサポートすることで、作業負担だけでなく、心理的負荷の軽減も期待できます。

簡単な問い合わせにはチャットボットが対応し、顧客の疑問に答えたいときには自動でFAQを表示してくれるなど、焦らずに顧客対応ができ、結果として顧客のユーザー体験の向上も期待できるようになります。

コールセンターが抱えている問題点

コールセンターが抱えている問題点

大切な顧客接点を担うコールセンターですが、コールセンターを持つ企業は運営においていくつかの問題点を抱えています。

まず考えられるのが、人材不足です。コールセンターのオペレーターは離職率が高く、採用できても人材が定着しづらい職業として知られています。さらなる人材不足が見込まれる昨今、コールセンターを持つ企業にとってオペレーターの定着率向上は切実な課題といえるでしょう。

また、生産性向上を目指した対応時間の短縮に取り組む企業も多いのではないでしょうか。一つのコールに対してどのくらいの時間をかけたのかを示す「平均処理時間(ATH)」の短縮が、コールセンターの生産性向上のカギを握ります。

特に、顧客からのコールに応えるインバウンド業務では、顧客が持つ疑問や不安、要望など、さまざまな問いに素早く対応し解決する能力が求められます。顧客からの質問が多様化したことによって、質問に応えるオペレーターには高いスキルと知識が必要とされています。質の高いオペレーターを増やしたくとも、定着率の低さからそれも難しい状況の会社もあるようです。

一般のお問い合わせ

購入した製品の不明点についてや、購入前の検討など、顧客ごとに異なる問い合わせに対してなるべく素早く回答します。企業やサービスにより、電話だけでなく、メールやチャットなど問い合わせツールの選択肢も増え、顧客への対応方法もさまざまです。基本的には顧客の疑問を解消する業務です。

サービスオーダー

商品やサービスの受注業務です。テレビやインターネット、雑誌、新聞などの広告で紹介した商品やサービスの受注を受け付けます。電話応対をしながらパソコン入力を行い、注文を完了させます。商品やサービスの内容理解が求められます。

製品案内

顧客に電話で商品やサービスを紹介したり、おすすめしたりして受注につなげる業務です。会社の収益につながりやすい業務といえるでしょう。しかし近年では、アウトバウンドに嫌悪感を示す顧客も多いことから、しっかり話を聞いてもらえるマニュアル作りなどが重要になります。アウトバウンドで売り上げにつなげるマニュアル作りには工夫が必要です。

製品サポート

顧客から製品についての不具合や使用方法について質問や相談を受ける窓口です。オペレーターには製品に対する確かな知識が求められます。1件1件の電話が長くなりやすく、電話による会話という限られた情報からサポートを行わなければならない難しさがあります。しかし、顧客の困りごとを解決できることも多いため、顧客に好印象を与えやすい業務です。

AI導入による効果

AI導入による効果

コールセンターが抱えやすい、離職率の高さから質の高いオペレーターを育成できず、そのために生産性もなかなか上がらないという問題点を解決したいのならば、課題を解決するソリューションの一つとしてAIの導入を考えてみてはいかがでしょうか。

顧客満足度が向上。AI導入の効果

例えばAIが応対を行うチャットボットを導入することで、24時間365日、顧客が「ほしい」と思ったタイミングに必要なサービスを提供できるようになります。深夜に製品やサービスの使い方がわからなくなったときでも、チャットボットがスムーズに問題の解決に導けば、おのずと顧客満足度も上昇するでしょう。チャットボットの自動応答は、同時にオペレーターの作業も軽減してくれます。自動応答で解決できる問題が多ければ、それに反比例してオペレーターの作業が減少していきます。

AIがオペレーターのサポートを行う場合には、オペレーターの画面上にFAQやマニュアルを表示したり、会話から予測される回答を提示したりと、「誰が対応しても一定の品質」になるようなサポートを行います。サポートがあることで、新人でもすぐに品質の高い対応が可能になるのです。これらの機能は、「実践しながらの人材教育」としても機能し、人材教育のコストを軽減する効果も期待できます。

AI導入してもオペレーターは必要?今後の課題

AIを導入するとこのようにさまざまなメリットを得られます。とはいえ、コールセンター業務のすべてをAIで代替することは不可能です。AIは「与えられた業務をきっちりこなす」ことには秀でていますが、人間のように柔軟な対応はできないからです。

AIコールセンターの業務としてここまでに挙げた内容は現状では特化型人工知能が担当しているため、初見の問題に対応する能力を持つ汎用型人工知能のような業務はできません。

プログラムで設定できない部分の対応や、「以心伝心」「阿吽の呼吸」のような、人との真の意味でのコミュニケーションはできないことを覚えておきましょう。「AIコールセンターがあるから人間は必要ない」のではなく、あくまでも主体は人間のオペレーターで、AIはその補佐をしているだけなのです。

今後、AIをさらに活用したいと考えるなら、人間のオペレーターでなくては対応できない部分があることを理解しつつ、AIが得意とする蓄積されたデータの分析や解析をマーケティングに利用するなど、AIの活動の幅を広げていく必要があるでしょう。

AI導入プロセスと留意点

AI導入プロセスと留意点

AIはコールセンター業務の生産性向上や効率化に役立つツールです。しかし、導入の際にはAIへの理解が必要不可欠となります。

導入プロセス

AIを賢く利用するためには、AIはあらゆることをすべて自律的に学習するシステムではないこと、対応領域が限られていることなどの理解が必要です。

例えばAIをデータ分析に利用する場合、形式がバラバラなデータをそのままAIに取り込むのではなく、データ形式を共通化してからAIに学習させます。データを提供し、AIをトレーニングするのはあくまでも人間です。さらに、AIでできる業務、できない業務を分けて、AIが行う案件の絞り込みも大切です。ここまではAI、ここからは人間というように、それぞれが対応する領域を決めておきましょう。

留意点

AIが稼働しはじめると、これまでにはないトラブルが生まれることもあります。ディープラーニング技術を利用したシステムを採用した後に、AIが「正しい」とした判断があったとしても、その理由やエビデンスを示すことは現在の技術では不可能です。AIが出した答えは幾層にも重なる数字の羅列で、まだそれを解明する技術も生まれていません。

そのため、AIの判断に誤りがあったときになぜそうなったのかという根拠が示せず、さらなるトラブルを生む可能性があります。AIの判断が間違った際、誰がその責任を取るのか、責任の所在を明確にしておく必要があります。

AIを導入しやすいコールセンターの選び方

AIには得手不得手があることから、コールセンターによってはAIがマッチしないこともありますが、逆に人間のオペレーターを十分にサポートしてもらえるコールセンターもあります。どのようなコールセンターならAIを最大限に活用できるのでしょうか。

大企業のコールセンターなど、規模の大きいコールセンターはAIを導入しやすく、かつAIによる効果を体感しやすいという特徴があります。チャットボットなど応対を自動化できるツールだけでなく、オペレーターをサポートするAIもコストカットに貢献してくれるでしょう。

災害やパンデミック発生に備えたい企業にもAIはおすすめです。災害時でも問題なく働き、顧客の問題を解決してくれるAIがあれば、万一の際でも安心です。災害時の対策としては、AI以外にも在宅のコールセンターという選択肢もあります。

AIは与えられた業務を確実にこなすことには長けていますが、感情をともなったコミュニケーションはできません。災害時、AIだけでは対応に限界が出てくるでしょう。そんなとき、各地に点在するクラウド型のシステムを利用した在宅オペレーターも併用することでより適切な問題解決を図れます。

まとめ

あらゆる分野で活躍しているAIは、コールセンターでも活用できます。ただし、導入の際にはAIが行う案件を絞り、AIを効率的にトレーニングできるようデータ形式を共通化するといった手間が必要です。また、現在活用されているAIは特化型人工知能であるため、人間の機微を読み取りコミュニケーションを行うことは不可能です。AIができること、人間がやるべきことをしっかりと見極めたうえで導入を進めましょう。災害時やパンデミック発生時に備えるためにAIを導入したいのなら、同時に在宅スタッフが応対を行う在宅型コールセンターの導入もおすすめします。AIと各地にいる在宅オペレーターが、万一の際でもしっかりと顧客応対を行ってくれます。

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